2026/5/19 00:00
生成AIコラム

本記事は、業務の属人化に悩む経営層・人事担当者・部門長・DX推進担当者に向けて、ベテラン社員の頭の中にある「暗黙知」を言語化する具体的な手法を解説します。マニュアルを整備しても結局ベテランに聞かないと業務が回らない、というお悩みの根本原因は、業務の核心がベテランの感覚に残る暗黙知であるためです。この暗黙知を引き出し、組織の資産として継承するための専門手法「ディープリスニング」の極意を、株式会社こころみのAIエージェント構築サービスでの活用例とあわせてお伝えします。
暗黙知の継承には、形式知との違いの理解、専門的なインタビュー手法、AIによる活用基盤の3点が欠かせません。マニュアル化が進まない原因は、ベテランの判断基準や例外対応が言葉になっていない暗黙知だからです。この暗黙知を引き出すためには、心理的安全性を確保し「状況・行動・影響」を深掘りする「ディープリスニング」が有効です。さらに、引き出したノウハウをAIが扱いやすい形に構造化し、RAG(検索拡張生成、AIが社内データを検索しながら回答する仕組み)を用いた「ノウハウ継承AI」へ実装することで、誰もが日常的に活用できる知識資産になります。
ベテランのノウハウがマニュアル化できない理由は、業務の核心が言葉になっていない「暗黙知」にあるためです。多くの企業はマニュアル整備を進めていますが、最も継承したい判断基準や例外対応はベテランの感覚に残ります。本章では、形式知と暗黙知の違いを整理したうえで、社内ヒアリングだけでは暗黙知が引き出しにくい構造的な理由を解説します。
形式知とは、文章や図表で誰でも理解できる形に表現された知識です。業務手順書、規程、操作マニュアルなどが形式知の代表例にあたります。一方、暗黙知とは、本人の経験や勘に紐づき、言葉にしづらい知識を指します。「この顧客はこういう兆候があるとクレームに発展する」「この機械はこの音が鳴ったら止めた方がいい」といった判断基準は、典型的な暗黙知です。マニュアルが形骸化する原因は、現場で本当に価値を生むこの暗黙知部分が抜け落ちてしまうことにあります。
社内ヒアリングだけで暗黙知を引き出すことには、構造的な難しさがあります。社内ヒアリングが核心に届きにくくなる要因は、大きく3つに整理できます。
1つ目は、心理的な遠慮です。ベテラン社員は「こんな当たり前のことを話してもよいのか」と感じ、本当に価値ある判断基準ほど語られない傾向があります。2つ目は、前提知識のズレです。聞き手が同じ業務を経験しているほど「言わなくても分かる」部分が会話から省略され、若手にとって最も必要な情報が抜け落ちます。3つ目は、言語化スキルのギャップです。本人がどんな手がかりで判断しているかを自覚していない場合、通常の質問では答えが返ってきません。これら3つの要因が重なると、社内ヒアリングだけでは暗黙知の核心部分まで届きにくくなります。
暗黙知を言語化するカギは、株式会社こころみが培ってきた「ディープリスニング」という専門手法にあります。ディープリスニングは、2014年から800人以上の高齢者との長期的な対話で得られた知見と、演劇的方法論にもとづく対話設計を組み合わせた独自のインタビュー手法です。本章では、ディープリスニングの基本アプローチと、本音や裏ノウハウを引き出す具体的な深掘りの型を紹介します。
ディープリスニングの基本アプローチは、心理的安全性の確保から始まります。心理的安全性とは、「何を話しても評価されない」「否定されない」という安心感のある対話環境のことです。社外の専門インタビュアーが第三者として話を聞くことで、社内では話しにくい本音や、評価につながりかねない裏ノウハウまで自然に語られる状態をつくります。さらに「あなたの工夫を後輩に残したい」という対話の目的を明確に共有することで、ベテラン社員は業務評価を気にせず経験を言葉にできるようになります。
ディープリスニングの中核は、「状況・行動・影響」という3階層で深掘りする質問設計です。ベテランの判断は単発の行動ではなく、状況認識から導かれた一連のプロセスです。「どんな状況のときに(状況)」「どう対応したのか(行動)」「結果として何が起きたのか(影響)」の順に深掘りすることで、本人も自覚していなかった判断基準が言葉になっていきます。この型に沿った深掘りにより、マニュアルには載らない「例外時の対応」「兆候を見抜くコツ」「失敗を避ける勘所」といった裏ノウハウを構造的に引き出せるようになります。
引き出した暗黙知を組織の資産にするには、AIへの実装と業務ツールへの組み込みが必要です。インタビューで言語化したノウハウは、テキストとして保管しておくだけでは活用が進みません。本章では、引き出したノウハウをAIが扱いやすい形に整理し、ノウハウ継承AIとして構築し、日常業務に組み込むまでの3ステップを解説します。
抽出したノウハウは、AIが扱いやすい形式へ構造化することで活用度が高まります。抽象的な判断基準や哲学はMarkdown形式で文章化し、業務の手順や分岐はYAMLやフローチャート形式で整理します。この使い分けにより、AIは「考え方」と「手順」を区別して参照でき、質問に応じた的確な回答が可能になります。さらに、社内用語や略称の定義を整備しておくことで、現場の文脈に即した精度の高い応答が実現します。
構造化したノウハウは、RAGの仕組みで会話型AIに統合します。RAGとは、質問が来たときにAIが社内のナレッジデータストア(専門知識を保持するデータベース)を検索し、その内容にもとづいて回答を生成する技術のことです。この仕組みにより、膨大な暗黙知データの中から質問に関連する知見だけを取り出し、自然な言葉で答えるエージェントが実現します。ベテラン社員と直接話しているような感覚で、若手社員が必要なときに必要なノウハウへアクセスできる環境が整います。
構築したノウハウ継承AIは、日常業務ツールに組み込むことで初めて資産として機能します。Slack、Microsoft Teams、社内ポータルなど、社員が普段使っているツールにエージェントを配置することで、「使うために特別な操作を覚える」負担をなくします。Slackでメンションするだけで、過去のベテランの判断事例を踏まえた回答が即座に得られる環境がその一例です。日常導線への組み込みが、ノウハウを「使われる資産」へ転換する最後のひと押しとなります。
ベテラン社員の暗黙知は、ディープリスニングによる言語化と、AIへの実装、業務ツールへの組み込みを通じて、組織の継承可能な資産へと変わります。マニュアルだけでは捉えきれない判断基準や例外対応も、専門のインタビュー手法と構造化、RAGを用いたエージェント構築を組み合わせることで、若手社員が日常的にアクセスできる知識へ転換できます。株式会社こころみは、800人以上のヒアリング実績で培ったディープリスニングと、miiboなどのAIエージェント構築プラットフォームの活用ノウハウを組み合わせ、暗黙知の引き出しからノウハウ継承AIの実装までを一貫してご支援します。属人化の解消とノウハウ継承にお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
▶ サービス詳細・お問い合わせはこちら:https://robotics.deeplistening.jp/

会話型AI構築プラットフォームmiiboでのAIエージェント構築実績を多数持ち、miiboの機能と活用方法に精通したライター。企業向けにmiiboの最新機能、実践的な活用事例、AI導入のノウハウについて情報を発信し、業務効率化とDX推進を支援している。
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