2025/6/12 02:00
セミナーレポート

本記事は、2025年6月10日に開催した「AIエージェント構築実践セミナー第18弾 ~ベテラン社員のノウハウを継承したAIを作る~」のイベントレポートです。ベテラン社員の退職や異動によって失われがちな暗黙知を、AIに継承させたいと考えている方に向けて、セミナーの内容をお届けします。
本セミナーでは、株式会社miiboの功刀氏がmiiboの最新機能を紹介し、株式会社こころみの森山氏がノウハウ継承AIの構築方法を解説しました。ノウハウを聞き出す「ディープリスニング」の手法、AI向けにデータを構造化する記法、そして社内での効果的な活用方法という3つのポイントが示されました。視聴者からは「ノウハウが実際にどう蓄積されているのか技術面から理解できた」という声が寄せられています。
「AIエージェント構築実践セミナー第18弾」は、ベテラン社員のノウハウをAIに継承する方法をテーマにしたオンラインセミナーです。株式会社miiboと株式会社こころみの共催により、2025年6月10日19時からZoomで開催されました。
本セミナーは、業務の属人化に課題を感じている方、社内ナレッジの共有・標準化を進めたい方、miiboを活用した業務効率化を検討している方を対象としています。参加費は無料で、アンケート回答者には講演資料が配布されました。セミナーの録画は、miiboのYouTubeチャンネルで公開されています。
本セミナーには、会話型AI開発の第一線で活躍する2名が登壇しました。前半を担当した功刀氏は、miiboの最新機能と活用事例を紹介しました。後半を担当した森山氏は、ノウハウ継承AIの構築方法を実践的に解説しました。
功刀雅士氏は、株式会社miiboの代表取締役です。10年以上にわたり会話AI領域のプロダクト開発に携わり、2023年4月にmiiboを設立しました。miiboは「自分自身(me)さえもAI化(bot)して、一人一人の人生の可能性を広げたい」という想いが込められたサービスです。
森山氏は、株式会社こころみでAIエージェント構築サービスを担当しています。こころみは2017年からロボット・スマートスピーカー向けの会話シナリオ開発を手がけており、800人以上の高齢者との会話データと知見をもとに、信頼関係構築に最適化された会話シナリオを作成しています。
セミナー前半では、功刀氏がmiiboの概要と最新アップデートを紹介しました。miiboは「Connect Everything」をテーマに掲げ、様々なデータと様々なAIを様々なユーザーインターフェースにつなげることを目指しています。
miiboは、会話型AIをノーコードで構築できるプラットフォームです。プロンプトカスタマイズ、ナレッジ機能、UI連携、ログ分析、ユーザーID管理、外部API連携などの機能を備えています。作成したAIは、ウェブチャット、エージェントハブ、LINE、Slackなど様々な場所で利用できます。
具体的なユースケースとして、問い合わせ対応AI、セキュリティチェックAI、契約書チェックAI、記事執筆AI、データ抽出AIなどが紹介されました。miibo社内でも「ミイボ君」というSlackボットを運用しており、社内ナレッジを引き出すために活用しています。さらに高度な活用例として、データと接続した分析AIや、会社の成長に寄り添う「グロースバディ」というAIも紹介されました。
miiboの最新アップデートとして、3つの機能が紹介されました。1つ目は「miibo Agent Hub」のα版リリースです。複数のAIエージェントを集約し、自律的に議論させながら協働させるマルチエージェント技術を搭載しています。
2つ目は国産AI基盤への対応です。さくらインターネット社の「さくらのAI」と連携し、国産の言語モデルを使ったAIアプリケーションを構築できるようになりました。海外AIが使えないケースや、通信が外部に出ることがNGな企業でも利用可能です。
3つ目は新モデルへの対応です。Anthropic社のClaude 4とGoogle社のGemini 2.5 Proに対応し、AIモデルの選択肢が広がりました。
セミナー後半では、森山氏がノウハウ継承AIの構築方法を解説しました。ベテラン社員が持つ暗黙知をAIに継承させることで、退職や異動による知識の喪失を防ぎ、誰でもいつでもノウハウを活用できる環境を実現できます。
ベテラン社員のノウハウは、マニュアルには載らない「暗黙知」として個人の中に蓄積されています。このノウハウが退職とともに失われてしまうことは、企業にとって大きな損失です。
人への引継ぎには2つの課題があります。1つ目は人手不足による引継ぎ工数の問題です。十分な時間をかけて引継ぎを行うことが難しい状況が増えています。2つ目は再属人化の問題です。せっかく引き継いでも、その人だけが知っている状態になってしまいます。
AIに学習させることで、これらの課題を解決できます。一度AIに学習させれば、多くの人が同時に利用でき、質問するだけで回答が得られます。マニュアルやWebサイトを読み込む必要がなく、必要な情報にすぐアクセスできる点も利点です。
ベテラン社員のノウハウを聞き出すには、「ディープリスニング」という手法が効果的です。単に質問するだけでなく、相手との信頼関係を築き、心理的安全性を確保しながら話を引き出すアプローチです。
社内の人がインタビューする場合、利害関係や部署間の問題があり、すべてを話してもらうことが難しい場合があります。第三者によるインタビューでは、組織内の事情に縛られず、本音や裏ノウハウまで引き出せます。過去のフィードバックとして「丁寧に聞いてもらえた」「組織文化や過去の経緯も聞いてもらえた」「内部スタッフでは聞けなかったことまで話せた」という声が紹介されました。
具体的なインタビュー方法として、「状況・行動・影響」に分けて聞き出すアプローチが紹介されました。どういう状況の時に、どういう行動をとって、どういう結果になったのか、どういう学びがあったのかを聞くことで、感情とロジカルな部分の両方を引き出せます。
聞き出したノウハウは、AIが理解しやすい形式に構造化する必要があります。ノウハウの種類によって適切なまとめ方が異なります。
哲学や仕事観などの抽象度の高い内容は、マークダウン形式で文章化します。見出しをシャープ記号で表現し、箇条書きをハイフンで表現することで、AIが構造を理解しやすくなります。判断基準やルールも同様に文章でまとめられます。
手順や業務プロセスなどは、マーメイドやYAMLといった記法を使います。セミナーでは、経費精算プロセスをYAML形式で記述し、AIに理解させるデモが行われました。これらの記法を使うことで、AIがプロセスの流れを正確に理解し、適切な回答を生成できます。
動画コンテンツをAIに学習させる方法も紹介されました。動画のURLと内容の詳細な説明を組み合わせることで、AIが動画の内容を理解し、ユーザーの質問に応じて適切な動画を紹介できるようになります。Google AI Studioを使えば、動画の内容を自動的にテキスト化することも可能です。
作成したAIを社内で活用してもらうには、使いやすい環境に実装することが重要です。いくら優れたAIでも、アクセスしにくければ活用が進みません。
実装方法として、3つの選択肢が紹介されました。1つ目はSlackなどの社内チャットツールへの実装です。普段使っているツールからAIに質問できるため、利用のハードルが下がります。2つ目は社内ポータルサイトへの組み込みです。既存の情報基盤にAIを統合することで、自然な形で活用を促せます。3つ目はmiibo Agent Hubの利用です。社内で利用するAIを一覧で並べておき、必要な時に質問したり、複数のエージェントを組み合わせて会話したりできます。
活用シーンとして、以下の例が挙げられました。退職予定のベテラン社員からのノウハウ継承、エース社員のスキルを全社員が使えるようにする全体の底上げ、異動や出向で一時的に不在になる社員の業務引継ぎ、夜間・休日など人が少ない時の判断支援、OJTや社内研修での活用、マニュアルには載っていない裏技や例外的処理の蓄積などです。
本セミナーの参加者からは、データ構造化の重要性やAI活用の可能性について、多くの感想が寄せられました。
「各種ノウハウをAIフレンドリーに再編集して構造化する重要性」が印象に残ったという声がありました。ベテラン社員の暗黙知をそのままAIに渡すのではなく、マークダウンやYAMLなどの記法で整理することの意義が伝わったようです。
「初心者なのでAIへの落とし込みがとても参考になりました」という声も寄せられました。ディープリスニングで聞き出したノウハウを、どのようにAIが理解できる形式に変換するのか、具体的な手順が示された点が評価されています。
「AIにてノウハウや経験など貴重な知見が理解されればどなたにも共有になる」という感想もありました。属人化していた知識をAIに継承させることで、組織全体で活用できるようになる可能性を実感いただけたようです。
「Google AI Studio、すごいですよね」「データの重要性を分かってない方が多い」という声からは、動画コンテンツのテキスト化デモや、AIの回答精度を左右するデータ品質の重要性が印象に残ったことがうかがえます。
本セミナーでは、ベテラン社員のノウハウをAIに継承するための3つのポイントが示されました。1つ目は「聞く力」でノウハウを引き出すことです。ディープリスニングの手法を使い、心理的安全性を確保しながら暗黙知を形式知化します。2つ目はノウハウの内容に応じた「構造化」でデータを作ることです。マークダウン、マーメイド、YAMLなどの記法を活用し、AIが理解しやすい形式に整理します。3つ目はAIに実装して「使いやすい環境」を整えることです。Slackや社内ポータル、miibo Agent Hubなど、社員がアクセスしやすい場所にAIを配置します。
miiboを使った会話AIの導入をご検討中の方は、お気軽にお問い合わせください。ベテラン社員のノウハウ継承から社内ナレッジの活用まで、御社の目的に合わせた会話AIの構築についてご説明します。
セミナー動画はこちら:

会話型AI構築プラットフォームmiiboでのAIエージェント構築実績を多数持ち、miiboの機能と活用方法に精通したライター。企業向けにmiiboの最新機能、実践的な活用事例、AI導入のノウハウについて情報を発信し、業務効率化とDX推進を支援している。
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