2025/12/17 02:00
セミナーレポート

本記事は、高齢者向けサービスや介護施設でAI導入を検討している方、会話AIを人とのコミュニケーションに活用したい方に向けて執筆しています。2025年12月11日に開催した「AIエージェント構築セミナー 第23弾 ~高齢者とおしゃべりするAIの今とこれから~」の内容をお届けします。
本セミナーでは、会話AIプラットフォーム「miibo」の最新アップデート情報、高齢者とおしゃべりする会話AIの構築ノウハウ、そして170名の高齢者に提供されている「Eコンシェルジュ」サービスから得られた14万回の会話データに基づく現場の声が紹介されました。高齢者の孤立や会話機会の減少という社会課題に対して、会話AIがどのような価値を提供できるのか、具体的な設計手法と実証データをもとに解説します。
本セミナーは、株式会社miibo、株式会社こころみ、日本テレネット株式会社の3社共催で開催されました。会話AIプラットフォーム「miibo」の開発者、会話AI構築サービスを提供するこころみ、そして実際に高齢者向けAIタブレットを運用する日本テレネットという、開発から運用まで一貫した知見を持つ3社が登壇しました。
開催日時は2025年12月11日(木)12:00〜13:00、Zoomによるオンライン形式で実施されました。対象者は、高齢者向けサービスや介護施設でAI導入を検討している方、会話AIをコミュニケーションに活用したい方、miiboを使った実践的なAI構築ノウハウを学びたい方です。
登壇者は3名でした。株式会社miibo代表取締役の功刀雅士氏からはmiiboの最新情報が共有されました。株式会社こころみ取締役CCOの森山裕之氏からは高齢者とおしゃべりするAIの構築ノウハウが解説されました。日本テレネット株式会社Eコンシェルジュ準備室の荒井陽介氏からは現場から見たAI活用事例と利用者の声が紹介されました。
功刀氏からは、会話AIプラットフォーム「miibo」の概要と最新アップデート情報が共有されました。miiboは、思い通りに動く対話型AIを自分で作り、社内外の人やお客様が使えるサービスとしてローンチできるノーコードプラットフォームです。プロンプトチューニング、ナレッジ検索、UI連携、ログ分析など、会話AIプロダクトに必要な技術要素をまるごとノーコードで提供しています。
直近の大型アップデートとして、管理画面のV2リリース、インサイト機能、ナレッジデータストアの最適化機能、最新言語モデル(GPT-5.1、Gemini最新版など)への対応が紹介されました。インサイト機能は、エージェントが話しかけられた情報から「ユーザーはどんなことを知りたがっているのか」「どんなことに困っているのか」といった示唆を自動で抽出する機能です。
今後のアップデート予定として、リアルタイムボイスボット機能、エージェントモード、UIのカスタム機能が計画されています。リアルタイムボイスボット機能は、リアルタイムな音声対話を可能にする機能です。エージェントモードは、AIがより自律的にタスクをこなせるようにする機能です。これらのアップデートにより、AIがより自然にコミュニケーションを取れるようになり、様々な環境に溶け込んで活用できるようになることが期待されています。
森山氏からは、高齢者とおしゃべりする会話AIを構築するための7つのポイントが解説されました。株式会社こころみは、2014年より高齢者向け会話型見守りサービス「つながりプラス」を通じて800人以上の高齢者との対話データと知見を蓄積してきた企業です。その経験をもとに、会話AI構築のノウハウが共有されました。
会話AIを構築する際は、まず「何のために会話をするのか」という目的を明確にする必要があります。健康増進、認知症発見、孤独感軽減など、サービスによって目的は様々です。主に考えるポイントは3つあります。AIから情報提供をするのか、ユーザーの状況を把握するのか、おしゃべりという体験を提供するのか、これらをどう組み合わせるかを設計します。
親しみを持って毎日喋っていただけるようにするには、キャラクターや人格の設定が重要です。子供のような孫的存在にするのか、同世代のおせっかいな友人にするのか、コンシェルジュのような安心感のある存在にするのか、目的に合わせて設計します。「この人と喋りたい」と思ってもらえるキャラクターを作ることで、継続率が向上します。
目的によって会話の設計は変わります。雑談メインであれば「今日は何の日」などのネタを活用します。生活支援系であれば天気予報や予定のリマインドを組み込みます。健康促進であれば体調ヒアリングを中心に設計します。回想支援であれば昔の思い出を引き出す質問を用意します。
音声会話をベースにする場合、いくつかの工夫が必要です。短めの会話にする、シンプルな言葉を使う、音声認識の誤認識に対応するなどの配慮が求められます。音声認識でテキスト変換する際に誤認識が入る可能性があるため、明らかにおかしい単語には反応しないようにプロンプトで制御することも有効です。
質問ばかりぶつけると高齢者の方も喋ることがなくなります。天気予報の情報を取得して「今晩雨降るそうですよ」と話しかける、最近のニュースを提供する、健康雑学を共有するなど、会話のフックとなる情報を外部から取得して提供することで、会話が盛り上がりやすくなります。
以前会話した内容を覚えて話しかけることで、ユーザーは「覚えてくれている」という感覚を持ちます。miiboの「ステート」機能を活用し、プロフィール、好きな食べ物、好きな芸能人、旅行に行った場所などを保存しておくことで、個人に合わせた会話が可能になります。
会話履歴から、目的が達成できているかを評価する仕組みを作ります。会話量が増えたか、活動量が増えたか、フレイルや認知症の兆候がないかなど、会話の中から測定できる指標を設計します。会話履歴をGoogleシートやBigQueryなどのデータベースに書き込んでおき、後から必要な情報を抽出してAIで評価する仕組みを構築できます。
荒井氏からは、日本テレネット株式会社が運用する高齢者向けAIタブレット「Eコンシェルジュ」の活用事例と、14万回の会話データから得られた洞察が紹介されました。
Eコンシェルジュは、京都大学との共同研究に基づき、高齢者の「幸せ」に焦点を当てたサービスです。日常会話や日記を通じて幸せの質を高める行動を促進することを目的としています。現在、京都市とその近郊の平均年齢74歳の高齢者170人に提供されており、夫婦世帯が6割、高齢者のみの世帯が8割。性別では、女性55%、男性45%という構成です。
利用時間帯は当初の予想に反して、夜間(22時〜23時)が最も多いことがわかりました。日中は予定があり、帰宅して1人になれる時間帯に「今日こういうことがあったよ」と話すという利用形態が多いとのことです。また、利用上位30名のうち女性が8割弱となっています。
睡眠への関心が非常に高く、不眠症の薬に頼らない方法を求める声が多く聞かれました。高価な寝具よりも、ハーブティーやアロマ、ストレッチなど、お金をかけずにできる方法が好まれます。セルフケアへの関心も高く、ツボ押し、マッサージ、体操、口腔ケアなど、自助努力でできる健康法が求められています。
「体を動かすと気持ちいい」という感覚を持っている高齢者は少なく、運動自体には喜びを感じていないという声が多いことがわかりました。運動の目的は健康維持や老化防止であり、「歩けなくなりたくない」「衰えたくない」という負の回避が動機となっています。継続の鍵は「誰かと一緒にやること」であり、1人で黙々と運動するのは難しいという声が聞かれました。
口腔機能の低下により、柔らかい食べ物を求める傾向があります。また、1人暮らしや2人暮らしの高齢者は調理の手間を省きたいと考え、電子レンジや炊飯器を活用した簡単な調理法を好みます。AIには献立提案や簡単な調理法を聞く利用が多く、「冷蔵庫にこれとこれがあるんだけど何か作れない?」といった質問が寄せられています。
価格よりも安心感や使いやすさを重視する傾向があります。孫やペットのためには品質の良いものを選ぶ一方、自分のことは我慢する傾向も見られました。複雑な操作や選択肢が多すぎると購入をためらうため、「これがベストです」と言い切ってあげることが安心につながります。
孫の存在が最大の幸せの源であり、孫のためなら体がきつくても頑張るという声が多く聞かれました。成長願望も持っており、できることが1つでも増えると嬉しいと感じています。学んだことを誰かに教えることにも喜びを感じており、「お裾分け」のように何かを人と分かち合うことも幸せにつながっています。
本セミナーには、介護・医療、IT、サービス業など様々な業種から参加がありました。アンケートに寄せられた声の一部をご紹介します。
「現場の生の声が聞けて大変参考になりました。高齢者向けAIの可能性を感じました」という声が多く寄せられました。日本テレネット社の14万回の会話データに基づく洞察は、実際に高齢者と向き合う現場の方々にとって貴重な情報となったようです。
「miiboの最新アップデート情報が参考になった」「リアルタイムボイスボット機能に期待している」というmiiboの機能に関する声もありました。会話AIプラットフォームの進化により、より自然なコミュニケーションが実現できることへの期待が感じられます。
「高齢者向け会話AIの構築ノウハウ、特にパーソナライズの部分が参考になった」「7つのポイントが体系的にまとまっていてわかりやすかった」という構築ノウハウに関する声も寄せられました。実際にAI導入を検討している方にとって、具体的な設計手法は実践に役立つ情報となったようです。
「孫が一番の幸せという話が印象的だった」「高齢者の本音が聞けて、サービス設計の参考になった」という会話データからの洞察に関する声もありました。アンケートでは得られない生の声をAIとの会話から抽出するという手法に、新たな可能性を感じた参加者も多かったようです。
Q&Aセッションでは、参加者から2つの質問が寄せられました。
「高齢者とおしゃべりするAIに自社の高齢者向けサービスを紹介してもらうような提携は可能か」という質問に対して、荒井氏は「高齢者のためになるサービスを一緒に育てていきたいという思いでやっているので、ぜひ連携させていただきたい」と前向きな回答をしました。
「方言にも対応できるのか」という質問に対しては、関西弁程度であれば対応可能だが、鹿児島弁などの特殊な方言は難しいとの回答がありました。功刀氏からは、鹿児島大学が方言をナレッジに入れて変換・解釈する取り組みを行っている事例が紹介されました。
本セミナーでは、会話AIプラットフォーム「miibo」の最新機能、高齢者向け会話AIの構築ノウハウ、そして170名の高齢者から得られた14万回の会話データに基づく現場の声が紹介されました。高齢者向け会話AIを構築する際は、目的設定、キャラクター設計、会話設計の3つが特に重要であり、パーソナライズや会話の評価まで含めた設計が求められます。現場のデータからは、高齢者が求めているのは高価なソリューションではなく、日常に寄り添った温かいコミュニケーションであることが明らかになりました。
セミナー動画はYouTubeで公開しています。高齢者向け会話AIの導入を検討されている方は、ぜひご視聴ください。
会話AIの構築についてご相談がある方は、お気軽にお問い合わせください。

会話型AI構築プラットフォームmiiboでのAIエージェント構築実績を多数持ち、miiboの機能と活用方法に精通したライター。企業向けにmiiboの最新機能、実践的な活用事例、AI導入のノウハウについて情報を発信し、業務効率化とDX推進を支援している。
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