2025/11/11 02:00

国産AI基盤で突破する企業のAI活用【ウェビナーレポート】3社共催セミナー

  • セミナーレポート

2025年10月30日、株式会社miibo、さくらインターネット株式会社、株式会社こころみの3社共催による無料オンラインセミナー「なぜ日本でAI活用が進まないのか?~『仕事の本丸』で使えない壁を国産AI基盤で突破する~」が開催されました。本セミナーは、日本企業がAI活用を進める上で直面する課題と、国産AI基盤による解決策を明らかにすることを目的としています。情報システム部門の管理職や、AI導入を検討している企業の担当者に向けて、実践的な知見を共有する場となりました。

本セミナーでは、日本企業のAI活用が「お試し」レベルに留まる3つの壁が明らかにされました。機密情報を海外製AIに送信できない「データの壁」、金融・医療・自治体など規制業界での「環境の壁」、業務判断を海外製AIに委ねることへの「責任の壁」という3つの課題です。これらの壁を突破する手段として、miiboの会話型AI構築プラットフォームと、さくらインターネットの国産AI基盤「さくらのAI Engine」の連携による国産基盤パッケージが紹介されました。さらに、経営会議議事録を学習させた経営会議資料アドバイスAIのデモを通じて、重要な経営情報や個人情報を扱う業務でのAI活用可能性が示されました。

目次

開催概要|Zoomオンラインで60分のウェビナーを実施

本セミナーは、2025年10月30日(木)12時から13時まで、Zoomオンラインで開催されました。参加費は無料で、Peatixイベントページから事前申込制としました。

対象者は、情報システム部門の管理職を中心に、AI導入予算を確保しているもののROIが出せずに悩んでいる方、セキュリティ制約で「仕事の本丸」にAIを導入できない方、経営陣から「AI活用による生産性向上」プレッシャーを受けている方、金融・医療・自治体など規制の厳しい業界でAI活用を検討している方としました。セミナー参加者には特典として、アンケート回答者に講演資料を配布しました。

登壇者紹介|AI領域のスペシャリスト3名が知見を共有

本セミナーには、AI領域で豊富な実績を持つ3名の専門家が登壇しました。株式会社miibo代表取締役の功刀雅士氏は、会話型AI構築の領域に10年以上携わり、日本企業のAI活用の課題とmiiboの最新情報について解説しました。

さくらインターネット株式会社AI事業推進室事業企画の由井文氏は、国産AI基盤による解決策を紹介しました。株式会社こころみ取締役CCOの森山裕之氏は、生成AIチャットボットの実践事例として、経営会議資料アドバイスAIのデモンストレーションを行いました。

日本企業AI活用の現実と課題|「幻滅期」の真因を解明

功刀氏は、生成AIが「幻滅期」に入ったという見方について議論しました。「当たり障りのないことしか言わない」「コストが高すぎる」「売上が上がった事例が聞かない」「便利そうだけど怖い」といった声がある背景には、モデルの性能不足ではなく、AIに適切なコンテキスト(会社の文脈)を与えられていないことが問題だと指摘しました。

この問題の根本原因として、功刀氏は3つの要因を挙げました。第一に、ROIが合わないユースケースでしか使っていないこと、第二に、仕事の本丸で利用していないため売上向上につながらないこと、第三に、安全な利用方法やガイドラインが整備されていないことです。これらの要因により、重要なデータをAIに与えられず、インパクトの大きい用途で使えず、仕事の本丸で採用されないという負のスパイラルが存在すると説明しました。

miiboによるノーコードAI構築のデモンストレーション

功刀氏は、miiboのデモンストレーションを通じて、プログラミング不要でAIエージェントを作成する手順を紹介しました。miibo.aiというページから、わずか数分の手順でAIエージェントを作成できることを実演しました。

デモでは、「miibo君」というmiiboのお問い合わせに24時間自動応答するAIを作成しました。プロンプトの設定、言語モデルの選択(さくらのAI Engineで提供されているcotomiモデル)、ナレッジデータの追加という3つのステップで、実用的なAIエージェントが完成しました。さらに、作成したエージェントを分析・改善するための機能や、Slack、LINE、LINEワークス、Discordなど様々なプラットフォームとの連携機能も紹介されました。

AIエージェントによるインサイト創出の可能性

功刀氏は、AIエージェントを業務の様々な場所に配置することで、エージェントが収集した情報をもとにインサイトを提供できるようになると説明しました。お問い合わせの傾向分析、商談のポイント抽出、顧客のチャンス喪失可能性の予測、経営リスクのアラート、見込み顧客の候補注視などの機能が可能になります。

実際にmiibo社でも、AIが出すインサイトに基づいて経営リスクの洗い出し、プロダクトの改善提案、次のイベントの企画案などの行動をしていると紹介しました。これにより、AIが単なる応答ツールではなく、組織の意思決定を支援する存在になる可能性が示されました。

国産AI基盤による解決策|さくらのAI Engineの特徴

由井氏は、日本のAI環境と課題について説明しました。AI基盤やサービスが外資系に依存しており、デジタル赤字の拡大を招く恐れがあると指摘しました。チャットGPTなどの外資系AIの利用が増えることで貿易赤字が膨らむ可能性があり、経済安全保障の観点からも国内でデジタルサービスの基盤部分からAIを開発できるようにすることが重要だと述べました。

この課題に対する解決策として、由井氏は「さくらのAI Engine」を紹介しました。さくらのAI Engineは、高性能GPUを基盤とし、APIを介して国内外の多数の基盤モデルやRAGの機能を提供するエンジニア向けサービスです。最大の特徴は、基盤モデルの開発元と連携していないため入力データが学習に利用される心配がなく、国外にデータが出ていかないセキュアな環境で開発ができる点です。

さくらのAIソリューション|パッケージ化されたAIサービス

由井氏は、セミナー当日10時に発表されたばかりの「さくらのAIソリューション」についても紹介しました。さくらのAIソリューションは、さくらのGPUとAIモデルとアプリケーションをパッケージにして顧客に提供するもので、エンジニアでなくてもAIを構築したい方や業務に活用したい方向けです。

顧客ごとに専用環境を用意するため、さくらのAI Engineよりもさらにセキュアな環境で利用でき、海外サービスにあるような利用条件やレートリミットもない「使い放題」のサービスとなっています。PoCが進まない、機密データを扱って業務改善したいといった課題を持つ金融、自治体、医療、製造業などに推奨され、月額固定で使いやすいと説明されました。

生成AIチャットボット実践事例|経営会議資料アドバイスAIのデモ

森山氏は、国産AI基盤を活用した具体的な事例として「経営会議資料アドバイスAI」を紹介しました。このAIは、経営会議の議事録という重要な経営判断情報をAIに学習させ、次に企画を上げたい人が稟議資料を上申する前に、AIにチェックしてもらってアドバイスを受けるというものです。

森山氏は、miiboの中で作成した経営会議資料アドバイスAIを示し、国産モデル「cotomi」を使用していることを説明しました。プロンプトは比較的シンプルで、ユーザーがアップロードした資料を過去の議事録を参照しながらレビューし、抜けている観点や追加で検討すべき事項を助言するよう設定されています。

経営会議議事録を活用したAIの実演

森山氏は、ナレッジデータとして10個の経営会議議事録を入力しました。これらの議事録には、過去の企画提案内容、指摘事項、評価観点、結論などが記録されています。実際のデモでは、DX推進計画という資料をAIにアップロードし、アドバイスを求めました。

AIは過去の議事録を参照しながら、資料の良い点(データ基盤構築、業務自動化推進、AI活用などのキー施策が盛り込まれている点)と不足している観点(財務への影響、リスク対策、実現性など)を指摘し、追加検討が必要な点(データ移行のトラブル対応、研修計画やサポート体制など)についてアドバイスを提供しました。さらに、新製品開発計画という別の資料についてもアドバイスを求めるデモを行い、より仕事の本丸に近い業務にAIを活用できる可能性を提示しました。

Q&Aセッション|プロンプトインジェクションとデータ整理の質問に回答

セミナーの最後にQ&Aセッションが行われ、さくらインターネットの高木氏も参加しました。最初の質問は「プロンプトインジェクションへの対応は万全か」というもので、功刀氏は対応は最大限行っているが、ユースケースによって対応が変わるため、個別に伴走プランを用意していると回答しました。森山氏も、B2Cの場合は特に注意が必要だが、必要度合いに応じて対応策を講じられると補足しました。

2つ目の質問「組織で生成AIを導入する場合、どこまでデータ整理が必要か」については、功刀氏が組織のデータの流れや業務プロセスを可視化し、効果の出やすいところから手をつけながら、並行してデータ整備を進めるのが現実的だと回答しました。3つ目の質問「さくらのAI Engineで使えるのはOSSモデルのみか」については、高木氏が現時点ではOSSモデルのみだが、今後日本語特化モデルとして日本企業が開発している有償モデルも搭載予定だと説明しました。

参加者の声|様々な業種から高評価と具体的な関心

本セミナーには、IT、医療業、保険・福祉サービス、小売・卸売り、通信情報事業など、多様な業種から参加がありました。参加者からは、miiboの操作性の高さ、国産AI基盤のセキュリティ面での優位性、実践的なデモンストレーションの分かりやすさについて、高い評価が寄せられました。

技術アドバイザリー業務の参加者からは「講演の段階がわかりやすかった」との声がありました。IT業界の参加者からは「会話型AI構築プラットフォーム『miibo』について詳しく知りたい」「さくらインターネットの『さくらのAI』について詳しく知りたい」という具体的な関心が示されました。技術管理者からは「miiboのサービスが、エンジニアでない人間でも操作性よくハードルが低く利用できることが良かった」との評価がありました。

ITサービス業の参加者は「社内環境での機密情報のAI対応は試験されていなかったため、認証されたクラウド基盤を利用できるので期待できた」とコメントしました。保険・福祉サービス業の参加者からは、国産AIの安全性やmiiboのクラウド環境での導入可能性、AIエージェント制作やNDA締結、SaaS利用といった具体的な運用面についての関心が示されました。小売・卸売業の参加者は「miiboパートナー募集も含めた信頼的な情報提供」に興味を示し、通信情報事業の参加者は「miiboのサービスそのもの」への関心を表明しました。

まとめ|国産AI基盤で広がる業務AI活用の可能性

本セミナーを通じて、日本企業がAI活用を進める上で直面する「データの壁」「環境の壁」「責任の壁」という3つの課題が明確になりました。これらの課題に対して、miiboの会話型AI構築プラットフォームと、さくらインターネットの国産AI基盤「さくらのAI Engine」の連携による国産基盤パッケージが、有効な解決策となることが示されました。

経営会議資料アドバイスAIのデモは、経営の根幹となる重要な情報を学習させたAIを使って、より仕事の本丸に近い業務にAI活用できる可能性を具体的に提示しました。国産AI基盤を活用することで、セキュリティ面の懸念を解消し、金融・医療・自治体など規制の厳しい業界でも安心してAIを活用できる道が開かれます。参加者からは、miiboの操作性の高さと国産AI基盤のセキュリティ面での優位性について高い評価が寄せられ、多くの業種から具体的な導入関心が示されました。

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国産AI基盤を活用したAI導入支援や、会話型AIの開発について、株式会社こころみがご相談を承ります。経営会議資料アドバイスAIのような実践的なAI活用事例の構築から、業務プロセスの可視化、データ整備支援まで、一気通貫でサポートいたします。

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株式会社こころみ miiboDesigner 岡 大徳

岡大徳

会話型AI構築プラットフォームmiiboでのAIエージェント構築実績を多数持ち、miiboの機能と活用方法に精通したライター。企業向けにmiiboの最新機能、実践的な活用事例、AI導入のノウハウについて情報を発信し、業務効率化とDX推進を支援している。

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