2026/1/5 02:00

雑談から「本音」が見える|14万回の会話データが教えるマーケティングのヒント

  • 生成AIコラム

本記事は、アンケート調査やアクセス解析だけでは見えてこない「顧客の本音」を知りたいと考えているマーケティング担当者、商品企画・開発担当者に向けて執筆しています。会話型AIを活用して顧客インサイトを獲得する新しいマーケティング手法について、具体的な事例とともに解説します。

従来のアンケート調査では、顧客は無意識に「優等生的な回答」をしてしまいがちです。しかし、リラックスした雑談の中にこそ、商品開発や改善のヒントとなる「真の本音」が隠されています。本記事では、170名の高齢者との14万回の会話データから見えた意外な顧客インサイトを紹介し、会話型AIをマーケティングリサーチに活用する方法を解説します。

なぜ「雑談データ」が最強のマーケティング資産なのか?

顧客の深層心理を理解するには、構造化されたアンケートよりも、自然な会話から得られるデータが効果的です。雑談データには、顧客自身も気づいていない「真の欲求」が含まれているからです。ここでは、雑談データがマーケティング資産として注目される理由を2つの観点から解説します。

「建前」のアンケート vs 「本音」の雑談

アンケート調査には構造的な限界があります。回答者は質問票を前にすると、無意識のうちに「こう答えるべきだ」という社会的に望ましい回答を選んでしまいます。健康に関するアンケートで「運動は好きですか?」と聞けば、多くの人が「好き」あるいは「どちらかといえば好き」と回答します。しかし、この回答が本音とは限りません。

雑談では、こうした「建前」が外れます。日常的な会話の中で語られる言葉には、アンケートでは決して出てこない本音が含まれています。「今日は膝が痛くて散歩をサボった」「孫が来るから頑張って掃除した」といった何気ない発言から、顧客の行動を左右する真の動機が見えてきます。

注目される「ゼロパーティデータ」の獲得

プライバシー規制の強化により、サードパーティCookieに依存したマーケティングは転換期を迎えています。Webサイトの行動履歴だけでは、顧客が「なぜ」その行動をとったのか、あるいは「なぜ」購入に至らなかったのかまでは分かりません。こうした背景から、顧客が自発的に提供するデータ、いわゆる「ゼロパーティデータ」の重要性が高まっています。

ゼロパーティデータとは、趣味嗜好、悩み、ライフスタイルなど、顧客自身が積極的に共有してくれる情報を指します。会話型AIとの雑談は、このゼロパーティデータを自然に獲得する手段として有効です。顧客は「データを提供している」という意識なく、日々の会話の中で自分の好みや価値観を語ってくれます。

14万回の会話から発掘!意外な顧客インサイト事例

株式会社こころみと日本テレネット株式会社は、170名の高齢者に会話型AIタブレット「Eコンシェルジュ」を提供し、14万回もの会話データを蓄積しました。このデータから、アンケートでは決して得られない興味深いインサイトが発掘されています。ここでは、健康意識と購買行動に関する2つの事例を紹介します。

健康意識のパラドックス:「運動は嫌いだが、歩けなくなるのは怖い」

「健康のために運動していますか?」というアンケートに「はい」と答える高齢者は少なくありません。しかし、14万回の会話データからは、まったく異なる実態が浮かび上がりました。「体を動かすと気持ちいい」という感覚を持っている高齢者は少なく、運動自体には喜びを感じていないのです。

運動の真の動機は、健康維持への前向きな意欲ではなく、「歩けなくなりたくない」「衰えたくない」という老化への恐怖でした。運動に対するモチベーションは「正の追求」ではなく「負の回避」だったのです。継続の鍵は「誰かと一緒にやること」であり、1人で黙々と運動するのは難しいという声も多く聞かれました。

このインサイトは、シニア向け健康サービスのマーケティングに大きな示唆を与えます。「楽しく運動しよう」というメッセージより、「いつまでも自分の足で歩くために」というメッセージのほうが響く可能性があります。また、グループでの運動プログラムや、オンラインで誰かとつながりながら取り組める仕組みの重要性も見えてきます。

購買行動のリアル:「自分のためは我慢、孫のためなら即決」

購買行動に関しても、予想外のインサイトが得られました。高齢者は価格よりも安心感や使いやすさを重視する傾向があります。しかし、もっとも興味深いのは、「自分のためには我慢するが、孫やペットのためには品質の良いものを選ぶ」という傾向です。

孫の存在は高齢者にとって最大の幸せの源であり、孫のためなら体がきつくても頑張るという声が多く聞かれました。財布の紐が緩むのは、自分のためではなく、大切な誰かのためという場面です。また、複雑な操作や選択肢が多すぎると購入をためらう傾向があり、「これがベストです」と言い切ってあげることが安心につながるという発見もありました。

こうしたインサイトは、シニア向け商品のマーケティング戦略を根本から見直すきっかけになります。商品訴求の軸を「自分のため」から「大切な人との時間のため」に変えることで、購買意欲を高められる可能性があります。

会話データをマーケティングに活かす仕組み

会話データの価値を最大化するには、適切な収集方法と分析手法が必要です。株式会社こころみでは、会話型AIプラットフォーム「miibo」とデータ分析基盤「BigQuery」を連携させ、会話データを効率的にマーケティングへ活用する仕組みを構築しています。ここでは、その具体的な手法を紹介します。

自然言語でデータを検索・分析する

蓄積された膨大な会話ログを人力で分析するのは現実的ではありません。miiboとBigQueryを連携させることで、AIが会話データを自然言語で検索・分析できるようになります。マーケティング担当者は「最近、ユーザーが不満に感じていることは?」とAIに質問するだけで、関連する会話を抽出し、要約したレポートを受け取ることができます。

BigQuery接続によるデータ活用では、SQL(データベース言語)の知識がなくても、自然言語で質問するだけでAIがSQLに自動変換し、必要なデータを取得します。これにより、非エンジニアでも自立的にデータを活用でき、分析時間と工数を大幅に削減できます。会話履歴がどの部署でどんな質問として活用されているかもログで可視化され、組織改善にも役立ちます。

なお、こうしたデータ活用においては、個人が特定されない形での分析を徹底し、セキュアな環境でデータを管理することが重要です。

「聞き出す」技術がデータの質を決める

価値あるインサイトを得るには、ただ漫然と会話ログを収集するだけでは不十分です。質の高いデータを獲得するには、適切な質問を投げかけ、本音を引き出す「聞き出す技術」が必要です。株式会社こころみが培ってきた「ディープリスニング」のノウハウが、ここで活きてきます。

ディープリスニングとは、心理的安全性を確保しながら、相手の本音を引き出すインタビュー手法です。「どういう状況で、どういう行動をとり、どういう結果になったか」を深掘りすることで、感情とロジカルな部分の両方を引き出します。会話型AIにこのノウハウを組み込むことで、「聞き上手」なAIが顧客の本音を自然に引き出せるようになります。

こころみが運用する高齢者向け会話型AIでは、相づちや繰り返しなど「聞き上手」な会話スタイルを採用しています。「昔どんな仕事をしていたの?」「小さい頃、何が好きだった?」といった語りたくなる質問を通じて、懐かしい記憶や人生の物語を自然に引き出します。こうした会話設計が、14万回もの豊かな会話データを生み出した基盤となっています。

まとめ:会話型AIは「24時間働くリサーチャー」

アンケート調査では見えてこない顧客の「本音」は、リラックスした雑談の中に隠されています。14万回の会話データから発掘されたインサイトは、従来のマーケティングリサーチでは得られない深い顧客理解をもたらしました。会話型AIとデータ分析基盤を組み合わせることで、24時間休まず顧客の声を収集・分析する「リサーチャー」を持つことができます。

株式会社こころみの「高齢者と雑談するAI」は、もっとも本音が見えにくいとされる高齢者層から、豊かなインサイトを引き出すことに成功しています。会話型AIを活用したマーケティングリサーチにご興味のある方は、ぜひ詳細をご覧ください。


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株式会社こころみ AIエージェントデザイナー 岡 大徳

岡大徳

会話型AI構築プラットフォームmiiboでのAIエージェント構築実績を多数持ち、miiboの機能と活用方法に精通したライター。企業向けにmiiboの最新機能、実践的な活用事例、AI導入のノウハウについて情報を発信し、業務効率化とDX推進を支援している。

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