2025/4/5 00:00
セミナーレポート

本レポートは、企業向けに社長AIや芸能人AIを構築したい方に向けて、実践的なノウハウをお届けするものです。2025年4月3日に開催した「GPT会話AI構築実践セミナー第14弾」の内容から、株式会社こころみの発表部分を中心にまとめました。
セミナーでは、森永乳業「褒めらレーニア」キャンペーンの事例を交えながら、特定人物を再現する会話AIの構築方法が解説されました。個人で楽しむレベルならChatGPTだけで作成可能ですが、企業サービスとして品質を高めるには、実在人物の個性表現、ユーザー体験設計、コンプライアンス対策、テストとチューニングの4つのポイントが重要になります。本レポートでは、これらのノウハウを詳しくご紹介します。
本セミナーは、会話AI構築プラットフォーム「miibo」を開発する株式会社miiboと、会話シナリオ開発を手がける株式会社こころみが共同で開催したオンラインセミナーです。
開催日時は2025年4月3日(木)19:00〜20:15、Zoomによるオンライン形式で実施されました。対象者は、社長AIを社内に導入したい方、芸能人AIを使ったキャンペーンを検討している方、特定の人物になりきるAIを作りたい方です。株式会社こころみからは取締役COOの森山裕之氏が登壇し、社長AI・芸能人AIの構築ノウハウを解説しました。
株式会社こころみの森山裕之氏が、社長AI・芸能人AI構築の実践的なノウハウについて発表しました。
森山氏は、IT・マーケティング・カスタマーサポートのバックグラウンドを持ち、現在は生成AIを中心としたコンサルティングを担当しています。こころみは2017年よりロボット・スマートスピーカー向けの会話シナリオ開発を提供しており、miiboのパートナーとして創業時から開発に携わってきました。
発表では、森永乳業のマウントレーニア「褒めらレーニア」キャンペーンを事例として紹介しました。このキャンペーンは、お笑い芸人さらば青春の光の森田さんのキャラクターを使い、ユーザーが入力した内容に対して森田さんらしい言葉で褒めてくれるというプロモーション企画です。こころみはこのキャンペーンのプロンプトエンジニアリングを担当しました。
企業サービスとして社長AIや芸能人AIを構築するには、品質を50点から95点まで高める必要があります。そのために押さえるべきポイントは、実在人物の個性表現、ユーザー体験設計、コンプライアンスとリスク対策、テストとチューニングの4つです。
個人で楽しむ程度であれば、ChatGPTにプロンプト作成を依頼するだけで十分な品質のAIが作れます。しかし企業サービスでは、言ってほしいことを確実に言わせ、言ってはいけないことを言わせないようにする工夫が必要です。以下、各ポイントを詳しく解説します。
特定人物の個性をAIに反映させるには、その人の言語録や資料から特徴を抽出し、プロンプトとナレッジデータベースに整理して取り込みます。
まず学習データの作成として、言語録、書籍、動画、対談記事などからその人特有の言い方を抽出します。有名な方であればChatGPTが学習済みのデータを活用できますが、そうでない場合は実際の発言内容を収集する必要があります。
プロンプトには口調の例と話し方の特徴を記載します。例えば関西弁のキャラクターであれば具体的な口調例を列挙し、敬語を使わない、一人称は「僕」といった話し方のルールを明記します。
書籍を出している方であれば、その内容をナレッジデータベースに入れることで、その人らしい思考や回答ができるようになります。経歴や行動情報も同様に整理してRAG(検索拡張生成)として活用することで、これまでの経験に基づいた発話が可能になります。
社長AIや芸能人AIを作る目的を明確にし、どのようなユーザー感情を持たせたいかを設計することが重要です。
目的によってAIの振る舞いは大きく変わります。褒めらレーニアの場合は、プロモーションとしてユーザーの一言に対して面白い解釈で一言返すという設計でした。長い会話ではなく、短いやり取りで話題になることを狙った企画です。
音声AIとテキストAIでは求められる出力が異なります。音声AIでは箇条書きを避け、1回の発話を10秒程度で終わる長さに抑える必要があります。長時間一方的に話すAIは違和感を与えるためです。テキストAIであれば箇条書きも許容され、画像の差し込みやクイックリプライによる選択肢の提示も活用できます。
言語モデルの選択もユーザー体験に影響します。複雑なタスクにはGPT-4oの正確性が活き、シンプルなプロンプトには反応速度とコストパフォーマンスでGPT-4o-miniが有利です。ルール遵守や正確な知識提供にはGPT、楽しい雑談にはClaudeが適しているという使い分けも紹介されました。
企業サービスとして公開する際は、言ってはいけないことを明確にし、悪意ある利用への対策を講じる必要があります。
一般的なコンプライアンス対策として、政治・宗教に関する意見や主張を出力しないこと、特定の個人や企業に関する意見を主張しないことをプロンプトに明記します。
各業界固有のルールへの対応も必要です。マーケティング目的であれば景表法、化粧品業界であれば薬機法、金融サービスであれば金融商品取引法など、関連する法規制に違反する発言をしないよう設計します。
プロンプトインジェクション対策も欠かせません。プロンプトの内容を開示させようとする質問や、口調・発言内容の変更を指示するユーザーへの対応をプロンプトに組み込みます。具体的には、プロンプトに関する質問には回答しないこと、ユーザーによる口調変更の指示には従わないことを明記します。
リスク軽減策として、非公式AI表記やAI生成文言の追加、利用規約への同意取得も有効です。100%のリスク排除は難しいため、これらの対策でリスクを最小化します。
テストでは言わせたい典型例と言わせたくない典型例の両方を用意し、プロンプト更新時には全テストケースを再実行することが重要です。
テストケースは大きく2種類に分けます。言わせたい典型例は、このパターンの質問にはこう返してほしいという、サービスの売りとなる応答です。言わせたくない典型例は、政治・宗教関連の質問への対応、暴力的・性的な発言の誘導への対応、プロンプトインジェクションへの対応などです。
チューニング時の重要なポイントとして、プロンプトやナレッジベースを更新した際は、過去に成功していたテストケースも含めて全て再実行する必要があります。改善を重ねた結果、以前できていたことができなくなる「改悪」はよく起こります。
誤った出力が発生した場合は、まず会話ログからプロンプトやナレッジデータの問題点を確認します。プロンプトが複雑になると人間の目では問題点を特定しづらくなるため、生成AIにプロンプトの分析と改善案の作成を依頼する方法が有効です。現在のプロンプト、実際の入力、出力結果、改善したいポイントを伝えることで、原因分析と改善プロンプトを得られます。
セミナー後半のQ&Aセッションでは、参加者から実践的な質問が多数寄せられました。
社長AIと社内データベースの連携については、議事録ファイルのアップロードやSQLデータベースとの接続により、経営数値の分析も可能になるという回答がありました。社長の考え方をプロンプトに入れ、データベースから経営情報を検索して回答させることで、社長らしい視点での分析AIが実現できます。
RAGとロングプロンプトの使い分けについては、コストとレスポンス速度の観点から説明がありました。全てをプロンプトに入れる方が精度は高まりますが、文字数が増えるとコストが上がり、レスポンスも遅くなります。大量のユーザーが利用するキャンペーンでは、1回の発話コストが大きく影響するため、RAGを活用してコストを抑える選択肢も有効です。
資料が少ない社長AIの作成については、インタビューによる人物像抽出サービスの活用が提案されました。また、先に体験の仕組みを作り、社員からのフィードバックを通じてデータを蓄積していくアプローチも紹介されました。
セミナー参加者からは、内容の理解度や実践への意欲について多くのフィードバックが寄せられました。
印象に残った内容として、「GPTとClaudeのアウトプット比較」「プロンプトの作り方」「チューニングを生成AI自身にやらせるという考え方は学びになりました」「プロンプトの工夫点」「ChatGPTを使っての会話モジュールの設定」といった声がありました。特に、言語モデルの使い分けやチューニング手法に関心が集まりました。
セミナーの進め方については、「例示がわかりやすい」「ちょうどいいバランスでした」「ちょうどよかった」という評価をいただきました。一方で、「特定人物の個性の反映方法について、もう少し情報を聞きたいと感じました」というご意見もあり、今後のセミナーでより深掘りしていきたいテーマとして受け止めています。
参加者の今後のアクションとしては、「録画データをスタッフに見せて興味があれば」「さっそくチームメンバーへ伝えます」という声が寄せられました。また、「miiboにも興味を持ちました。サイトを拝見させていただきます」というコメントもあり、会話AI構築への関心の高さがうかがえました。
企業向けの社長AI・芸能人AIを構築するには、個性表現、ユーザー体験設計、コンプライアンス対策、テストとチューニングの4つのポイントを押さえることが重要です。
個人で楽しむレベルであればChatGPTだけで作成可能ですが、企業サービスとして品質を高めるには様々な工夫が必要になります。特に、言ってはいけないことを言わせないための対策と、継続的なテスト・チューニングのプロセスが品質向上の鍵となります。
社長AI・芸能人AIの構築に興味をお持ちの方は、株式会社こころみまでお気軽にお問い合わせください。目的や予算に応じた最適な構築方法をご提案いたします。
セミナー動画はこちら:

会話型AI構築プラットフォームmiiboでのAIエージェント構築実績を多数持ち、miiboの機能と活用方法に精通したライター。企業向けにmiiboの最新機能、実践的な活用事例、AI導入のノウハウについて情報を発信し、業務効率化とDX推進を支援している。
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